「ぐるぐる♡博物館」を読んだら、ただの博物館紹介エッセイではなかった話。

博物館が好きだ。旅先で博物館を発見したら、とりあえず入ってみる。

「博物館」と一口に言っても、内容はさまざまだ。(中略)

展示物の見せ方もいろいろで、映像や音楽をふんだんに使っている博物館もあれば、説明が手書きで紙も黄ばみ、展示ケースの隅でハエが死んでたりする博物館もある。

 いずれにせよ、「なにを」「どんな目的で」「どんなふうに」見せるか、どの博物館も工夫を凝らしている。つまり、テーマとアプローチがわりと明確かつ明快なぶん、それぞれの個性が出やすいのだ。そこが楽しい。独自の切り口で集めた収蔵品を、自由な(ときに奔放ですらある)観点に基づいて展示し、来館者に驚きや発見をもたらしてくれる。

博物館は私にとって、胸躍るテーマパークだ。

 

作家の三浦しをんさんによる博物館探訪エッセイ、「ぐるぐる♡博物館」を読了しました。

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このような本があるとは、今まで知らなかった。なんたる情弱であったものか。

 

冒頭の引用は当書のエピローグなのですが、私の博物館好きのズバリ理由が文章になっていて、本屋さんにて立ち読みした瞬間にびっくりしてしましました。これは私の悪いところであり、人って誰しもまぁまぁそうじゃないかなって勝手に思ってるんですけど(おい)、『好き』っていう気持ちって、なかなか文章化できなくないですか?

 

好きなモノヒトコトというのは、いつのまにかなんとなく対象の魅力に取りつかれていて、『なんでそれが好きなんだろう』って、理由を堀下げていくのって結構むずかしい。生い立ちを含めた複雑なエピソードの上に理由があったりして、人に簡潔に説明するのも難しい。結局、『なんか好きなんですよねぇ』とかいってお茶を濁して生きてきたタイプなので、自分の趣味を上手~~に文章家していただいたのを見て感動してしましました。

 

「ぐるぐる♡博物館」は、三浦さんが全国10つの博物館をめぐり、学芸員さんに話を聞きながらその魅力を紹介するという内容。その博物館たちも、

雲仙岳災害記念館(宮城)、奇石博物館(静岡)…といった博物館好きの私でもノーリサーチのマニアックラインナップ。(誰が事前ロケしたんだろうw

博物館ってやっぱり、お堅いイメージがついて回るんですが、展示品に対する三浦さんのツッコミはまさに「普通のわたしたち」と同じもの。

 

奇石博物館(静岡)の回が特に秀逸で、コンニャク石」という曲がる石に目鼻をつけ、電気仕掛けを施して腹筋背筋をさせつづけるという謎展示についての館員とのやりとりでは「・・・・・」「・・・・・・・・・・・」

と言葉をなくしている三浦さん。超有名作家でも言葉を失う、謎の情熱を持つ館員たち。これこれ!これが博物館の魅力なんです。

 

さらにあとがきでは、三浦さんもこう締めくくっています。

 

博物館にはどうしても、「お堅い」「お勉強の場」というイメージがあるが、実際に行ってみると、そんなことはまったくない。むちゃくちゃ気合が入った展示だったり、「どうしてこのテーマ」を選びなすった?」と謎が謎を呼んだり、博物館自体が一個の人格を帯びているかのように、それぞれが特有の魅力を宿していて、とても楽しい。

 

 

国立科学博物館なんていうのは、要するに日本の科学館の親玉なので国を背負って全力で科学を学ぶ場として機能しているわけですが、全国の、特に私設博物館にはそうではない(ように見える)いろーんなニッチな博物館もある。

そうした博物館の魅力は、展示そのもの以上に、『そのニッチに情熱をかける人間がいるという面白さ』にあると思うんです。

「どうしてこれが好きになったんだろう?」って考えるのは難しい。でも、その理由を考えていくと、その人の歴史だったり思想が、その人の育った環境、時代、社会を含めて想像できたりするんです。

私設博物館は、「好き」っていう気持ちを、丁寧にかつ分かりやすく説明して、共有してくれている場なんですね。

そんな博物館自体が好きっていう私は、結局、博物館を通していろーんな人のいろーんな部分について考えたり想像したりするのが好きなんだろうと、再認識できました。

 

「ぐるぐる♡博物館」では、私のヘブン「国立科学博物館」を紹介する回もあるのですが、このような総合博物館もただのお勉強の場としてだけでない、作家さんとしてのフラットな目線で紹介されていて、私も「あー、たしかになぁ」と新たに魅力に気づかされることとなったので、博物館好きな方も、そうでない方も、どちらにもおすすめできる本だと思います。

 

三浦さんと博物館行ってみたいなぁ。

 

 

護国寺自宅にて

 

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